2014/08/28
今、足場業界の最重要課題といえば、職人の確保ではないでしょうか。そしてその解決策の一つとして政府が掲げているのが外国人実習生の期間延長(3年から5年に)です。
今年に入り外国人実習生の受け入れを始めた会社も多いと思いますが、雇用環境及び待遇に関してはしっかりとした管理が求められそうです。以下は、北海道新聞の社説(2014/08/27)からの抜粋です。
「外国人実習制度 拡大の前に抜本改革を」(北海道新聞社 08/27社説)
政府は外国人技能実習制度について、実習生を雇用する企業への監督・指導を強化するため、立ち入り調査権限のある機関の創設を検討している。
実習制度をめぐっては、安倍政権が人手不足を補うため、現行最大3年の実習期間を5年に延長し、対象職種を広げるなど受け入れ拡大を成長戦略に盛り込んだ。
この方針に合わせた対策だが、そもそも現状でも実習生の劣悪な環境が問題になっている。
実習生の保護強化は当然で、むしろ遅すぎたぐらいだ。
安易な拡大に踏み切る前に、制度が抱える多くの問題点を検証し、抜本的に見直すべきだ。
1993年に導入された実習制度は、途上国の人材を日本の職場に期間限定で受け入れ、習得した技術を母国の発展に役立ててもらうのが本来の目的だ。
2013年の実習生の総数は約16万人で、道内でも約5千人を受け入れている。国内業界の要請に応じて、対象も建設、製造、農業など68職種に増やされた。
しかし、賃金の不払い、長時間労働などのトラブルが絶えない。
厚生労働省の昨年の調査でも、8割の事業所で法令違反が確認された。パスポートや預金通帳を取り上げるといった人権侵害も起きている。
技術移転と人材育成を通じた国際貢献という制度の趣旨とはほど遠く、安価な労働力として使われているのが実態だ。
このため、日本弁護士連合会は制度自体の廃止を訴えており、米国務省が「強制労働」と批判するなど、海外の目も厳しい。
政府は、何よりも不正行為の根絶に努めなければならない。監督機関の新設は第一歩にすぎない。
本来、その実効性を見極めるのが筋だが、東京五輪の建設需要にこたえるため、政府は既に20年までの時限措置として、建設分野での実習期間の延長を決めた。
これでは、実習生は景気変動に伴う雇用の調整弁に等しい。監督強化も国内外の批判をかわす方便とみられても仕方あるまい。
実習生は労働関係法の保護対象だが、実習の建前に縛られ、転職などが認められていない。
こうした矛盾を棚上げにして泥縄式の対応を重ねるのは限界だ。実習生の労働に支えられた地方の産業や中小企業も少なくない。
この現実から目をそらさず、外国人労働者の新たな受け入れ制度を含む環境整備を正面から議論する必要がある。
北海道新聞社